『野人転生』レビュー|チートなし・服もなし。空手と知恵で挑むワイルド系異世界サバイバル

あらすじ

野崎人志、通称「野人」はトラックに轢かれ、神を名乗る者によって異世界へ転生させられる。
定番の展開と思いきや、チートなし、ついでに服もなし。異世界の人里離れた森の奥に、全裸の状態で送り出されてしまう。
知恵と持ち前の空手スキルを武器にモンスターと対峙し、サバイバル生活に順応してきたころ、野人の前に新たな脅威――凶暴なホブゴブリンが現れる。
その圧倒的な膂力を前に逃げ出す野人だったが、逃走中にすれ違った少女がホブゴブリンにさらわれてしまう。
見捨てるわけにもいかず、野人は戦うことを決断する。

評価

絵の美しさ (4)
演出力 (5)
キャラクター (5)
世界観 (4)
ストーリー (4)

※評価は筆者の主観に基づくものです。

総合: 4.4 / 5

書評

『野人転生』は異世界転生というジャンルに属しながら、物語の中心にあるのはサバイバルである。
チート能力や装備もなく、全裸で森の奥に放り出されるという奇抜な導入ではあるが、そこから始まるのはリアルな異世界サバイバルである。

戦闘描写においても、派手な技や魔法が飛び出すわけではなく、空手の技術と状況判断を組み合わせて、モンスターや獣といった脅威に立ち向かっていく。
目つぶしや不意打ち、地形を利用した攻撃など、生き残るためには手段を選ばない場面も多く、敵の弱点を突く狡猾さも描かれている。
こうした地に足の着いた描写が、読者に強い緊張感を与え、戦闘シーンを読み応えのあるものにしている。

ストーリー展開においても緊張は途切れない。
人里に下りた野人は、人という新たな脅威にさらされ、次々と窮地に追い込まれる。
物語全体を通して危険が絶えず、落ち着ける場面がほとんどない点が本作の特徴である。

異世界で、空手とサバイバル知識だけを頼りに生き抜いていく――
そうした泥臭い物語を求める読者には、強く響く作品だ。

好き嫌いの分かれるポイント

グロ表現あり(軽度)

戦闘描写において、やや生々しい表現が含まれています。

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