私の心はおじさんである
あらすじ
枯れきった孤独なおじさんサラリーマン・山岸遥(43)。仕事をするだけの日々を送っていた彼は、ある日目を覚ますと異世界にいた。しかも何故か美少女ダークエルフの姿に。
森の中で混乱する中、偶然発動した魔法をきっかけに冒険者と出会い、街へ案内してもらえることに。
案内をしてくれた冒険者から「ヤマギシさんも冒険者になったほうがいいですよ、魔法が使えるなら食いっぱぐれがないので」と勧められ、新人冒険者向けの講習会に参加することに。
とはいえ臆病で暴力が苦手なハルカは、「もっと無難な仕事を探して街で静かに暮らそう」と考え立ち去ろうとする。
そんなハルカを呼び止めたのは、新人冒険者のグループだった。
思いがけず無尽蔵の魔力、無敵のフィジカル、そして若さを得たハルカ。臆病な心を抱えながらも、仲間や冒険を通して少しずつ世界と向き合っていく──。
評価
| 絵の美しさ | (4) |
|---|---|
| 演出力 | (5) |
| キャラクター | (5) |
| 世界観 | (3) |
| ストーリー | (4) |
※評価は筆者の主観に基づくものです。
書評
本作の魅力は、何よりも“冒険のワクワク感”だ。
異世界に転移した主人公ハルカが、初心者講習で出会った冒険者たちと少しずつ世界を知り、共に成長していく。
冒険者ギルドの仕組み、護衛依頼での遠出、初めて訪れる街――
見慣れない日常のひとつひとつに新鮮さがあり、読者も一緒に冒険の第一歩を踏み出すような感覚を味わえる。
そしてもうひとつの特徴は、主人公ハルカの慎重で臆病な性格にある。
よくある冒険ものの主人公のように、大きな使命を背負っているわけでもなく、無謀に危険へ飛び込むこともない。
それでいて、平坦な日常というわけではなく、一歩ずつ前に進む物語には確かな起伏と緊張感がある。
冒険心と穏やかさとのバランスが心地よく、“落ち着いて読めるのに胸が高鳴る”冒険ファンタジーとして優れている。
孤独に慣れて擦り切れた心を抱えながらも、人とのつながりを通じて変わっていく過程には、
読者を前向きな気持ちにさせる魅力がある。
食べ物の話題だけ妙に積極的な一面も可愛らしく、物語に優しいユーモアを添えている。
冒険のワクワクと静かな癒し、どちらも味わいたい人におすすめの一作。
ネタバレ込みのレビュー
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物語が進むにつれ、舞台は少しずつスケールを増していく。
期せずして無敵の力を得たハルカは、仲間たちと共に依頼をこなす中で、
世界の広さと、自身の力の異常さを実感していく。
人をはるかに上回る巨体の魔物に噛みつかれても無傷――
その常識外れの強さは、慎重な性格と対照的だ。
突然大きな力を手にしたことへの戸惑いも描かれており、
変化に向き合う心の揺らぎが印象的に映る。
一国を相手取るほどの武力を持つ特級冒険者の存在、
宗教国家・神聖国レジオン、帝国の権力争い――
物語の背景では、少しずつ大きな世界の輪郭が見え始める。
それらの断片が今後の展開を予感させ、作品に厚みを与えている。
無敵の力を得ても、力を誇示することなく、あくまで慎重さと優しさをもって人と関わろうとする姿。
その在り方が作品全体のトーンを支えており、
穏やかな人間ドラマと、これから広がっていく世界への期待が心地よい余韻を残す。
好き嫌いの分かれるポイント
原作は「小説家になろう」で連載中で、すでに1000話を超える長編となっています。
続きが気になる方は、ぜひ原作もチェックしてみてください。
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