『推定悪役令嬢は国一番のブサイクに嫁がされるようです』レビュー|価値観のズレが生む、じれったくて可愛い異世界ラブコメ

あらすじ

前世の記憶を持つ令嬢・エマは、「女神のいとし子」を迫害した罪で断罪される。
だがそのような事実はなく、当のいとし子ディルナとも仲の良い友人関係だった。
政治的判断により、エマは“国一番のブサイク”と呼ばれる辺境伯ルースのもとへ嫁ぐことになる。

ところがこの世界では「髪の色の濃さ=美醜」の基準。
ルースの容姿は前世の基準に照らせば“ブサイク”とは真逆で、誰もが振り返る超イケメン。
武勇も財も備えた完全無欠の男だった。

エマはそんな彼に心から惹かれるが、自己評価が異様に低いルースはその想いを信じられず、
愛情がすれ違う日々が続く――。

評価

絵の美しさ (4)
演出力 (3)
キャラクター (4)
世界観 (3)
ストーリー (4)

※評価は筆者の主観に基づくものです。

総合: 3.6 / 5

書評

本作の特徴は、美醜の基準が異なる世界観にある。
主人公エマは、容姿だけでなく人柄を含めてルースに惹かれていくが、
ルースはこの世界特有の価値観による深いコンプレックスから、
自己評価が極端に低く、他者からの好意を素直に受け取ることができない。
この設定があるからこそ、見た目ではなく心の在り方を重視する物語性が際立っている。

この世界の基準では絶世の美女とされるエマと、醜悪な外見とされるルース。
互いに好意を抱きながらも、その想いはすれ違っており、じれったさを感じさせる。
過剰な謙遜(時に自己卑下)をするルースに対し、
積極的に想いを伝えるエマの一途な姿が微笑ましい。
誤解が重なっていくコメディ調のやり取りが軽やかで、
読んでいるだけで自然と笑みがこぼれる。
この“甘くて可愛いすれ違い”こそが、本作の魅力をいっそう引き立てている。

自分を卑下する完璧イケメンに、まっすぐな好意と尊敬の念を伝え続けるヒロインの姿が、とにかく尊い。
甘やかしたい系読者にはたまらない、“癒しと幸福感”で満たされる物語だ。

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