『「ショップ」スキルさえあれば、ダンジョン化した世界でも楽勝だ』レビュー|崩壊していく日常で生き抜く“現代ファンタジー”

『ショップ』スキルさえあれば、ダンジョン化した世界でも楽勝だ 〜迫害された少年の最強ざまぁライフ〜

あらすじ

いじめを受け、孤立していた高校生・坊地日呂。
ある日、通っていた学校が突如として“ダンジョン化”し、多くの人々がモンスターに襲われ命を落とす。
命からがら家へと逃げ帰った日呂は、同様の異変が世界各地で発生していることを知る。

混乱の中、“ショップ”というスキルが発現する。
現金やアイテムをポイントに変換し、ポーションや武器などを購入できるこの能力。
拡大していく“ダンジョン化”の脅威から身を守るため、
日呂は手にしたスキルを頼りに、人知れずダンジョンの攻略を始めるのだった。

評価

絵の美しさ (4)
演出力 (3)
キャラクター (3)
世界観 (2)
ストーリー (4)

※評価は筆者の主観に基づくものです。

総合: 3.2 / 5

書評

主人公はヒーロー然とした理念を持たず、あくまで自己防衛と自己責任で行動する。
助けを求められても「関わりたくない」と切り捨てる一方で、
いざ目の前で苦しむ人を放っておけない――そんな矛盾を抱えた人物だ。
完全な利己主義者になりきれず、時に感情にほだされる人間的な弱さ。
その不器用さが、逆にリアリティと親しみを生んでいる。

世界から距離を置きつつも、結局は誰かを救ってしまう。
そんな“陰の実力者”らしい自由で飄々とした立ち回りが、本作の一番の魅力だ。

一方で、スキルまわりの描写は説明不足な点もあり、やや引っかかる部分もある。
また、ショップで購入できる品目の描写が少なく、想像を膨らませる余地が乏しい点も惜しい。

「何でも買える」という設定を掲げながら、その“何でも”を具体的に見せないことで、展開の意外性よりも“置いていかれる感覚”のほうが強くなってしまっている。

好き嫌いの分かれるポイント

TS(性別変化)

中盤には、主人公がアイテムを使用して一時的に性別を変えて活動する展開(TS要素)も含まれており、好みが分かれる部分かもしれない。
物語の主軸はサバイバルに置かれているため、設定上の要素として軽く受け流す程度に読めばよいだろう。

なお、サブタイトルに“ざまぁ”とあるが、復讐要素はそれほど多くなく、
“ダンジョン”についても、ファンタジーの定番である迷宮構造ではなく、
日常空間にモンスターが発生・定着したような設定となっている。
モンスターはダンジョンの外へ出られず、外界は比較的安全で、
インフラも機能しているため、生活感の残る世界観が特徴的だ。
タイトルのイメージとは異なる点も多いため、その点は留意しておきたい。

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