あらすじ
高校生のマサムネはいじめを苦に自ら命を絶った。
だがその直後、クラスメイトとともに勇者として異世界に召喚されてしまう。
召喚者に与えられるはずの強い能力を期待されたものの、マサムネに授けられた職業は「ヒーラー」という最弱職。能力も低く、歓迎されるクラスメイトたちとは対照的に、役立たずとみなされてしまう。
その結果、マサムネは召喚者の身勝手な判断で世界のどこかへと転移させられることになるのだった。
彼は召喚者やクラスメイトへ強い憎しみを抱き、
「この国ごと塵も残さず消し炭にしてやる。お前ら全員殺してやる!」
と言い残し、転移魔方陣が発動する際の光に包まれ、姿を消すのだった。
評価
絵の美しさ | |
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演出力 | |
キャラ魅力 | |
世界観 | |
ストーリー |
※評価は筆者の主観に基づくものです。
書評
・復讐を核とした物語展開
本作の大きな魅力は、主人公が抱く強烈な復讐心と、それを包み込むダークな世界観にある。
いじめや裏切り、召喚者の身勝手さといった徹底的に不条理な状況が物語を彩るが、全体が重苦しい雰囲気というわけではない。
陰鬱さは物語の根底にありつつも、その割合は半分以下に抑えられており、復讐系が好きな読者にはもちろん、重さ一辺倒を避けたい読者にも入りやすい仕上がりになっている。
なお、復讐シーンは複数巻を経てから本格的に描かれる。
すぐに復讐を期待する読者には少し待たされる印象があるかもしれないが、その過程で積み重なる出会いや成長があるからこそ、復讐パートの重みが増しているとも言える。
・出会いによる成長
召喚者やクラスメイトから見捨てられたマサムネだが、転移先での出会いは彼にとって大きな転機となる。
支え合える存在との関わりを通じて、自己否定に沈んでいた心は少しずつ解きほぐされ、自信を取り戻していく。
絶望から立ち上がり、成長していく過程は重苦しい物語の中でも温かみを与え、読者の共感を呼ぶポイントとなっている。
・迫力ある戦闘シーン
マサムネが抱く憎悪と復讐心は、そのまま戦闘における力の源となる。
怒りを糧に繰り出される攻撃は迫力に満ち、緊張感のある戦闘描写は読者を引き込む。
鬱屈した感情を爆発させる場面でもあり、作品全体に強いカタルシスをもたらしている。