ヘルモード 〜やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する〜 はじまりの召喚士
評価
絵の美しさ | (3) |
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演出力 | (5) |
キャラクター | (4) |
世界観 | (4) |
ストーリー | (4) |
※評価は筆者の主観に基づくものです。
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あらすじ
やり込み好きの廃ゲーマーが、ネットで見つけた謎のゲームを難易度設定「ヘルモード」で開始した瞬間、異世界の赤子として転生する。
その世界ではレベルやスキルが存在し、凶悪な魔物が闊歩する過酷な環境。
彼が転生前に選んだ才能は、前例のない未知の才能「召喚士」。
さらにヘルモードの制約により、常人の百倍の経験を積まなければ成長できない。
それでも彼は飽くなき探究心で召喚士の真価を極めるべく、異世界での“やり込み”を始める。
書評
『ヘルモード』は、そのタイトルの通り異世界転生ものの中でも群を抜いて過酷な状況で始まる。
主人公アレンは、生まれながらにして多くの困難を背負い、さらに転生時に選んだヘルモード設定によって、成長に通常の百倍の経験を積まなければならない。
それでも彼は逆境にめげることなく、むしろそれを楽しみとして受け止め、飽くなき探究心で立ち向かっていく。
不屈の精神と綿密な分析を武器に、限られた手段を効果的に使いこなす姿は、読む者の心を奮い立たせる。
召喚士という職能の設定や、戦闘時における物量戦など、複雑になりがちな内容をわかりやすく描く堅実な作画が作品を支えている。
単なる力比べではなく、戦略と判断が勝敗を分ける知略戦としての面白さを余すことなく表現しており、演出力・ストーリーの両面で高評価に値する。
ネタバレ込みのレビュー
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物語が進むにつれ、この世界のシステム的構造が少しずつ明らかになっていく。
人類と魔族の対立――つまり「勇者と魔王の戦い」は、力の差が歴然とした絶望的な構図だ。
人間の多くは“ノーマルモード”という制約のもとに生きており、成長の早さやスキルの面では優遇されているものの、
どれほど鍛えても“システム的な上限”に阻まれてしまう。
勇者でさえ例外ではなく、人類最強と称えられながらも、いずれ魔王の圧倒的な力の前に屈するしかないという限界を悟っている。
一方、アレンは“ヘルモード”という極端な設定で転生したことで、常人の百倍の経験を必要とする代わりに、成長上限のない唯一の存在となっている。
並大抵の努力では成果が出ず、ノーマルモードの人々に追いつくことすら困難。
それでも、ヘルモードを自ら選ぶほどのやり込み気質と、不屈の精神を持つアレンは、この理不尽な世界を覆す可能性を秘めている。
知識と分析、そして圧倒的な忍耐によって一歩ずつ限界を超えていく姿には、静かな希望が宿っている。
物語が進むにつれ、勇者すら諦めた“魔王の支配する世界”を、アレンが理不尽な条件の中から攻略の糸口を見つけ出し、
戦略と積み重ねで切り崩していく展開が描かれる。
「不可能」とさえ言える状況を、努力と知略で上書きしていく過程は本作の最大の醍醐味であり、
弱者の執念がシステムを突破していく瞬間こそ、『ヘルモード』の真骨頂といえる。