『処刑された賢者はリッチに転生して侵略戦争を始める』レビュー|正義と理想の狭間で戦うダークヒーロー

あらすじ

魔王を討ち、世界を救った勇者と賢者は、平和を脅かす存在として王により処刑される。
10年後、賢者ドワイトは死者の谷でリッチとして蘇り、アンデッドの軍勢を率いて王都へ進軍。
崇敬する勇者の意志を汚した王を討ち、王都を不死者の国へと変貌させる。
もはや“脅威を排除するだけでは平和は訪れない”と悟ったドワイトは、
世界の歪みを正すべく、人類の脅威として——新たな魔王として君臨することを決意する。

評価

絵の美しさ (4)
演出力 (4)
キャラクター (5)
世界観 (4)
ストーリー (4)

※評価は筆者の主観に基づくものです。

総合: 4.2 / 5

書評

本作の魅力は、勧善懲悪では割り切れない構図が生み出すダークで重苦しい世界観にある。
争いのない平和を掲げる者と、それを実現するために戦争を選ぶ者。
お互いの正義がぶつかり合う中で、善人を含めた多くの犠牲が生まれてしまう。

主人公ドワイトの掲げる理想は、一部の人間の幸せや平穏、そして正義を踏みにじった先にある。
悪を排除すれば平和が訪れるという単純な構図ではなく、
常に緊張感と罪悪感が残り続ける重苦しさが、作品全体を包み込む。

ドワイトは、生前の賢者としての知識に加え、
死者の谷の瘴気を取り込み、勇者の剣技さえも継承し、リッチとして圧倒的な力を得る。
魔法と剣を自在に操るその姿は、まさに“最強の魔王”。
数多の敵を討ちながらも、虐げられる者たちを配下として救い上げる。

冷徹でありながら確かな信念に基づく行動が魅力的で、
理想のために悪を引き受けるその覚悟がダークヒーローとしての説得力を増し、
本作の重厚な世界観を支えている。

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