あらすじ
中世ヨーロッパ風の世界観と剣と魔法のファンタジーが融合したVRMMO「ザ・ディスティニー」。
プレイヤーネーム「カミュ」で冒険していた主人公は、ネタ装備「福笑いの袴」の影響で巨漢となって友人とふざけていた最中、突如ログアウト不能の事態に巻き込まれる。
なぜか元の姿に戻ることができず、重量ペナルティにより能力は大幅に低下し、最強の一角から最弱プレイヤーへと転落。さらに倉庫に蓄えたアイテムまでも消失し、一部のプレイヤーからは迫害を受けることに。孤立と嘲笑の中、カミュは元の姿を取り戻し、失われたものを取り返すための復讐を誓う。
評価
絵の美しさ | |
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演出力 | |
キャラ魅力 | |
世界観 | |
ストーリー |
※評価は筆者の主観に基づくものです。
書評
本作は「デスゲームもの」の王道を踏襲しつつ、そこに独自の緊張感を加えている。ログアウト不能、死ねば終わりという状況は定番ながらも、最弱に転落した主人公がどう生き延びるのかという逆境の構図がこの作品の特色だ。
キャラクター面では特に際立っており、悪役たちは理不尽な暴力を振るう存在として描かれ、読者に強烈な憎悪と復讐のカタルシスを与える。一方の主人公カミュは、戦闘はおろか生活すらままならないほど弱体化し、家畜の飼料で糊口をしのぐ惨めな日々を送る。その徹底的に追い詰められた姿が、物語全体に重みと緊張感をもたらしている。
復讐譚としての陰鬱さに加え、やがて主人公最強ものへとつながる期待感が織り込まれており、作品全体を引き締めている。
ネタバレ込みのレビュー
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物語はVRMMO「ザ・ディスティニー」の世界に囚われ、最弱に転落した主人公カミュが迫害され、理不尽な暴力にさらされたことから復讐を誓うところから始まる。以降は敵対プレイヤーとの軋轢や、徹底的に不利な状況での生存劇が描かれていく。やがて元の姿に戻れない原因が「呪い」であることが判明し、より強力な呪いのアイテムで上書きすることで元の姿に戻れるようになる。
その後は巨漢として活動する際に使う仮の名前「カジカ」と、本来の姿である「カミュ」を使い分けながら復讐のために暗躍していく展開が特徴的だ。カミュの姿で戦う場面には「主人公最強もの」らしいわくわく感がある一方で、意外に苦戦することもあり、特に仇敵リンデルを取り逃すシーンは読後感がすっきりしない部分もある。
また、復讐がメインテーマでありながら主人公にはお人好しな側面もあり、道中で人助けをするなど単純な復讐劇にとどまらない人間味も描かれている。
ただし、コミカライズは原作小説の第3部にあたる部分で終了している。そのため物語の大筋は続いているにもかかわらず、漫画としては途中で幕を下ろした形になっている。デスゲーム化した理由や、直前に行動を共にしていた「ササミー」の行方といった伏線は解明されず、原作小説においても回収されない可能性がある。こうした未解決の要素があるため、完結感を求める読者には物足りなさが残るだろう。
おすすめポイント
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最弱に転落した主人公の逆境と緊張感が魅力
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デスゲーム×復讐譚の王道を楽しみたい人におすすめ
好き嫌いの分かれるポイント
物語途中で完結
原作小説もまだ完結しておらず、コミカライズは第3部にあたる部分で終了している。漫画だけで完結を望む人には物足りなく感じられるかもしれない。